創作鞄槌井のオーナー兼職人の仁さんが栃木レザーについての記事を執筆しました。
職人目線のマニアックな内容で栃木レザーファンのみなさん必見です!
創作鞄槌井の企業様向けイベント企画
創作鞄槌井では、一般のお客様はもちろん個人事業主の方や大企業皆さんからご依頼を承りお仕事させて頂いておりますが、その一つに企業様のイベント開催というお仕事もさせて頂いております。
今回はSDGsな取り組みをされている革作りの現場を見るという事で栃木レザーの工場にasics社員の方々を見学ご案内するイベントを創作鞄槌井が開催させて頂きましたのでご紹介致します。
唯一無二の革 栃木レザーについて
皆さんは栃木レザーという名前は聞かれた事ありますか?
革好きの方は知ってるかもしれませんが、実は日本で1番革としてブランド化されてる革なんです!
ブランド化されている革製の商品は数多くありますが、革という素材だけでここまで知られているのは、栃木レザーだけだと思います。
それだけ特徴的で特別な革を作られているタンナーさんなんです。
栃木レザーと一般的な革は何が違うのか
革の特徴を決める大きな要素は
・原皮
・なめし
・仕上げの加工
これらの3点なのですが栃木レザーはその中でもなめしが特徴的なんです。
なめしというのは、生の動物の「皮」を私達が使えるような「革」に変化させる事の事を言うのですが、
実際に何がおこっているかと言うと動物のタンパク質と何か違う物質を結合させて、腐らないように、そして柔軟性などの特徴をもたす事なのですが・・
その結合させる物質と、結合させる方法が栃木レザーは特別なんです!
一般的な革は「クロム」という物質を結合させていて、「タイコ」というという大きなドラム洗濯機のような木製の機械に入れて舐めします。日本ではなめす時間が短く量産しやすいこちらのなめし方法が主流です。
↓ドラムの写真

しかし栃木レザーでは天然の「モザミ」などのタンニンを使っています。
それを「ピット」という大きなプールのような所で濃度を少しづつ濃いプールに移しながら何ヶ月もかけて舐めしていくんです。ドラムなめしはなめし剤が浸透するまで数日だといわれるので、数ヶ月間かかる栃木レザーのピットなめしはとても手間暇がかかるのです。
そのため、皮に負担が少なく時間をかけてタンニンがしっかり浸透し革らしい風合いを残し使うほどに奥深い経年変化を楽しめる革に仕上がります。また、ドラムでかき混ぜて無いので革の繊維が締まって固くしっかりとした革に仕上がります。
↓ピットなめしの写真

昔ながらの技術が今や貴重で特別な技術に
実はこの方法の舐めす工程は今は殆どされてないんです。
日本でも戦前は殆どのタンナーが、この方法で舐めしていたようなのですが、今このピット舐めしをしているタンナーは日本でも数社だけなんです…
栃木レザーさんで行われている製法こそ昔からの日本伝統のなめし方なんです!
現在は革新的とか最先端とかどんどんと新しい技術が出てきて、変化を求められますが、そんな時代でも伝統と昔からの想いを大切にして仕事をされてている栃木レザー様は凄いです。
見学の際には栃木レザーの担当の方から様々なお話しをお聞きし
「新しい技術に飛び付かずに伝統を大切にした先人を尊敬している」と仰ってました。
この事は私達も物作りをする人間として学ぶ事があるなと考えさせられました。
↓栃木レザー工場長のお話しを真剣にきくasicsのみなさん

栃木レザーが独自の革の風合いを出す様子
そんな栃木レザーの伝統の舐めしによって天然の革を風合いを
生み出して、唯一無二の風合いを引き出すんです!
↓栃木レザーの革の写真

更に革の風合いを引き出せるように磨き上げている様子
↓グレージングの動画
「⭐豆知識」
よくヌメ革とか俗称を聞くと思いますが、フルタンニン舐めしの革をヌメ革(や本ヌメ)と言います。
またはベジタブルなどとも言います。
ただこれは舐めし剤がタンニンであるという事であってピットかドラムかは表していないので、ピットのヌメ革というと栃木レザー様の様な革の事をさします。
栃木レザーのSDGsな取り組み
栃木レザーに使用するものは天然の素材なので、口に入れても安全で、舐めす時に使う水も科学的な方法ではなくてバクテリアなどによって浄化する事が出来るんです。人にも環境にも優しいものが皆から指示される人気の革になっているって素晴らしいですよね。
↓浄化槽の動画
asics様と栃木レザー工場見学が実現した経緯
今までお話ししたような素敵な革を作っておられる栃木レザーをasicsの方々と見学・案内して参りました。
実はasicsさんとは数年前から毎年イベント開催をして頂いているのですが、前回は兵庫県の辰野にあるタンナーの見学をしたのですが、今回関東でも見学されたいというご要望を頂き、開催の運びになりました。
毎回様々な方が来てくださり、なんと今回asicsの社長の、阿部様も来てくださりました。
↓asics社長の阿部様と創作鞄槌井の職人の写真

栃木レザーに行く道中バスでの移動でしたが、その中でも様々な話をさせて頂きました。
今迄パタンナーなど制作のお仕事から販売営業迄様々経験されて、叩き上げで社長になられたお話しや仕事に対する想いなどもお聞きできました。
そして当然と言えば当然かもしれませんが、様々な知識が深く、とてもリーダーシップのある方で「日本を代表するような会社の社長はこんな資質を持っておられるのか!」と感銘を受けました。本当に凄い方でした。
今回はasicsの方々と共に栃木レザーの製造現場を見れてとてもいい機会を頂けました。
いつの日かasicsでは難しくても、オニツカタイガーなどで限定の栃木レザーシューズが出来る事を願っています☺️
asics様イベント2日目 栃木レザーを使用したベルト製作ワークショップ
栃木レザー工場見学の次の日は創作鞄槌井がある神戸に戻って来て、今度はasicsの方々と私の工房で栃木レザーを使ったベルト製作のイベントをさせて頂きました。
革とバックルと糸を選んで頂き、オリジナルのベルトを1人一点づつ制作体験をしながら完成しました。
皆さんお気に入りの一本ができたようで喜んでくださり嬉しかったです☺️
↓栃木レザーを使用したベルト製作ワークショップ



そして今回のイベントの立役者
「アシックスユニオン中央事務局長」の平田さんの支えを借りてなんとか今回も無事終了しました。
asicsの方と関わらせて頂くと本当に色々学してもらえます。
私ももっと頑張らねばと思わせてもらえます。
↓参加者のみなさんが選ばれた栃木レザーベルトにお好きなベルトバックル金具を付けました



職人目線で選ぶ 栃木レザーの特性を活かした革製品とは
ピットでのタンニン舐めしの特徴はなんといっても奥深い独特な革の風合いですが、それは使い込むと更に色合いを変えて深い風合いに変わってくるんです。
そしてドラムを使っていないので、革の繊維がほぐされてなく固くしっかりとした革になっています。
創作鞄槌井ではベルトのような厚みがあり伸びにくく、摩擦に強い事を求められるような製品にはとてもマッチしていると考えて、使用した後の硬さや色の変化も十分に楽しめる「栃木レザー本革ベルト」を店頭商品で数多く取り揃えております。職人が適したベルト用の栃木レザーの中でも1番分厚く硬いしっかりした革でベルトを製作したものをご用意しております。
また、店頭には出していない特別な栃木レザーもございますのでオーダーメイド製作も出来ます。
栃木レザーさんにはとても良くしてくださり、他では出してないようなカラーも在庫があったりしますので、是非ご来店下さい。
革から裁断して作っているので、人より長めが欲しいとか、持っているバックルに合うベルトが欲しいなどのご希望にも添えます。(財布や鞄や革小物などのオーダーメイドも大歓迎)
創作鞄槌井の店頭に数多く栃木レザーの革があるわけではありませんが、しっかりと取り扱っておりますので栃木レザー好きな方も是非ご来店ください。